めくるめくメルク丸

行為は無為よりも、ほんの少しだけ優れてゐる。(バガヴァッド・ギーター)

ムーンワールド再訪記(2)マイ・フェイヴァリット・MoonDiscs

f:id:lovemoon:20180419112821j:plain前回/前々回は、ムーンワールドにおけるいささか観念的な考察ばかりだった気がするので、今日はふつーに、素朴なプレイ雑感をつらつら記していきたいと思います。

『moon』を久方ぶりにプレイして驚いたのは、これだけ思い入れの強い作品にもかかわらず、自分が細かなことごとを(想像していた以上に)忘却してしまっていること。ゲームを進めるために必要な、モンスターのソウルキャッチ方法や住民たちのイベントもずいぶん忘れてしまった。記憶に残っているのはおおまかなマップと、登場人物たちの行動パターン/関係性くらいだ。

そして、この世界が以前プレイした時よりもずっと狭く、「こじんまり」と感じるのはまあ、無理もないだろう。『moon』発売から20年、ゲーム世界は加速度マシマシで進化し、こちらはどこまでも広がっていくマップの、どこまでも緻密になっていくRPGをずいぶんプレイしてきたのだから。

だけど、ムーンワールドにおける「時間感覚」。それだけはばっちり自分の内に残っていた。時間の流れとアクションリミット(行動可能時間)がキモになるこのゲームにおいては、時計と自分の移動速度の把握が(少なくとも序盤においては)かなり重要になる。

住民達から「ラブ」(レベルを上げるための経験値)を得るにはこのリミットを出来る限り長くする必要があるので、ラブレベルを早いめに上げていった。できるだけ効率的に、でもそのプロセスをよく吟味しながら。

手っ取り早いのはモンスターたちのソウルを回収、もとい、キャッチ!していくこと。とくに序盤はイジワルな仕掛けはない。街の住民たちへの干渉は行動可能時間が増えてからに留めておき、ひとまず祖母の家を拠点にし、遭遇できる範囲のモンスターたちのソウルをひとつひとつキャッチしていく。こまめに帰宅し、ラブレベルを上げていく。ああ、懐かしい。「あの頃」の感じが戻ってくる。

レベル5くらいになると、24時間くらいは眠らずとも大丈夫な身体になるので、南東にあるニッカさん宅を目指す。ニッカさん(冒頭写真)は「自らが心のままに進むべく道」を目指すため、彼と相棒ポッカが長年暮らした家を主人公に無料で貸してくれるのだった。

現実世界でもそうであるように、人は自分の家(部屋)を手に入れた時、自分の中にある、もうひとつの時計が動き始める。その時計をすっかり自分のものとするには、住まいと、もうひとつ必要なsomethingがある。

音楽だ。

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『moon』において瞠目すべきシステム「Moon Disc」。

これはバーンの路上店舗(名前はヘヴィメタ雑誌の「BURN」、LPやCDの「盤」をかけているのだろう……などと記すのは野暮であろう。まるで90年代の個人レコード店のように雑多なジャンルの楽曲が売られている)でDiscを購入し、好きなようにプログラムし、再生することができるシステム。沈黙を愛するプレイヤーは何も買わずにBGMのない旅を楽しんでも良いし、あるいは自分の気に入った1曲を延々再生してもかまわない。

この画期的システムは、現在においてはそこまで珍しいものではないかもしれないが(とはいえ、思ったより定着していないように思う)、当時はとてつもなく素晴らしく感じた。「手抜き」と感じるプレイヤーもいたかもしれない。でもゲーム内BGMをプレイヤーに委ねる懐の深さとともに、派手ばでしい音楽によって物語を色付け、牽引してきた既存のRPGに対するインパクトのあるカウンターとして、「戦闘廃止」と同様、この作品を強く印象づけていたように思う。

※ただし、この自由闊達なシステムを誇る『moon』においても、いくつかの場面においては、製作者の決めた音楽(あるいは無音)を避けることができないことだけは明記しておきたい(「祖母の家」「城内」「テクノシティ」他)。「さすがにここではこれを流さねば……」という製作者の譲れぬ主張が感じられる。そして、その判断は概ね正しかったように思える。

 

また、『Moon Disc』で聴ける多種多様な音楽と、『moon』が発売された90年代当初のクラブカルチャーシーンを切り離して考えることは難しい。

当時、東京都内のクラブで感じられた雰囲気(横文字にすればアトモスフィア)とこのムーンワールドに流れる音楽、さらに言えば、このゲーム全体に通奏低音のように流れる空気感は、当時のサブカルチャーと大きくリンクしていたようにも思う。とはいえ、90年代当時のことなど何も知らなくとも、すっかり忘却してしまっても、『moon』というゲームの功績が減ずることは決してない。時代の空気をどれほど色濃く反映した作品であっても、時代性とは無関係に人の心に残ることができる。そう言い切ってしまいたい。そのテーマが普遍的なものであれば。

では、『moon』の普遍的テーマとは? それについては後ほど改めて考えてみたい。

今晩はMoon Discを聴きながら眠ります。

個人的好みで恐縮ですが、僕がmoonをプレイする際、今も昔も外せない4曲とともに。

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シンセのイントロが流れ出すと、「俺のmoon」が始まった感じ、ひしひしする。

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20年前も『I'm waiting〜』に続けてかけていたこの楽曲は、夜のムーンワールドによく合う。

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静かな心持ちでプレイしたい時、延々と流していたいカーム・チューン。

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荘厳で素敵な曲です。僕のハンドルネームはこの楽曲から取っていて……というのはウソですが。

今日も雑多な内容になってしまいました。先は長くもないけど短くもないだろう。

おやすみなさい。